ビター・スウィート
『私……ずっと、広瀬先輩のことが好きでした』
『だから、広瀬先輩が幸せになってくれないと嫌です!先輩が愛した人と……幸せになってくれなきゃ、嫌なんです!!』
あいつが、精一杯の勇気で伝えた気持ち。それを、どう思った?
困った?惑った?それとも、
「……嬉しかった、よ」
がやがやと社員の行き交うフロアのなか、ぼそ、と響いた広瀬の声。それは嘘偽りのない、真っ直ぐなもの。
「意味は違えど、ちーは大切な人だから」
穏やかな瞳に少し驚いて、同時に安心して笑った。
「ならよかった。答えによってはぶん殴るところだったからな」
「え!?」
よかった、な。その大きな気持ちは、きちんとこいつに伝わっているよ。
一人の人間として、大切だって。きっとそれは最高の褒め言葉。
広瀬の答えに満足したように笑うと、俺は椅子から立ち上がり商品部のフロアを後にした。