ビター・スウィート
「う〜ん……」
缶を二本手に、足の向かった先は『商品部』と書かれた俺たちのフロアの隣の部屋。
宣伝広告課のある小さなフロアのなかで、その姿はデスクに伏せ頭を抱え込んでいた。
「なに変な唸り声あげてんだよ」
「え?わっ、内海さん」
声をかけ部屋へと入ると、永井は顔を上げこちらを見た。
その手元には『新商品の売り場展示案』と書かれた紙。それが今、こいつを悩ませていた理由なのだろう。
「なんだ、売り場展示まで考えてんのか?」
「はいっ、営業部の子から頼まれて。でもなかなか難しくて、どう商品を並べたら魅力的に見えるかがわからないんですよねぇ……」
「やる気があるのはいいが、飛ばしすぎるなよ。熱出すぞ」
「失礼な!」
いつもに間して仕事に情熱を燃やしているのは、失恋の傷を癒やすためなのか。それとも、改めてやる気になっただけなのか。
「ほら、少しは休憩しとけ」
「え?」
そう俺が差し出したカフェオレの缶を受け取り、永井はきょとんとしてみせる。