ビター・スウィート
*4
変わる心
彼の胸で目一杯泣いたら、不思議と心が軽くなった。
気持ちを伝えられたことも、大きかったのかもしれない。
広瀬先輩に『好き』と言えたのも、思い切り泣けたのも、全ては彼がいたから。内海さんの存在が、あるから。
だからこそ今は、彼のための仕事がしたいと思う。
「最近ちー先輩、やる気すごいですねぇ」
ある日の午後。デスクで書類をまとめる私に、隣でパソコンに向かう菜穂ちゃんはぼんやりと呟いた。
「うんっ、やる気充分!どんな仕事も、どんとこーいって感じ!」
「ちー先輩、失恋したからって仕事に生きなくても……」
「別にそうじゃないけどね!?」
哀れみの視線を向ける菜穂ちゃんに否定をすると、書類を手に立ち上がる。
「よしっ、新商品の商品レポート出来たっ。内海さんに出してくる!」
「はぁーい。今日は叱られないといいですねぇ」
「うん!」
今までは、広瀬先輩への気持ちに左右されていたやる気。だけど今は自分から、あれもこれもしたいという気持ちがみなぎってくる。
悲しい気持ちを包み込んでくれた、そんな内海さんに認めて貰える仕事がしたい。ただ、その気持ちひとつ。