ビター・スウィート



その日の夜、二十二時頃の駅前通りに私の姿はあった。



「が、頑張りすぎた……」



あの後、内海さんから突き返された書類の直しに、それ以外に回ってきた仕事など……あれもこれもとこなすうちに、気付けば時刻はこの時間。

レポート終わったのに今日に限って内海さんはとっくにあがっているし……。



「毎日全力で仕事する、って大変なことなんだなぁ」



今更ながら実感するそのことに、首をコキコキと鳴らし、駅前の大きな道を歩いて行く。



「……あれ」



すると目にはいるのは、道路を挟んだ向かいの道沿いにある、大きめな居酒屋の入り口。

そこにある影はどこか見慣れた姿……黒いスーツに白いシャツ、ネクタイはしていない。そう、内海さんだ。



「内海さん?なにしてるんだろ」



居酒屋?広瀬先輩とかな?あれ、でも内海さんは飲めないし……。

そう考えながら見ていると、内海さんに続いて居酒屋から出てきたのは一人の若い女の子。

見た感じ、まだ20歳くらいだろうか。黒のロングヘアに白っぽいワンピース。大学生くらいの、清楚な雰囲気の女の子だ。


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