ビター・スウィート
うちの会社のフロアにはいくつか資料室があって、そのなかで一部屋だけオートロック式のセキュリティのしっかりとした資料室がある。
そこは個人情報や会社の情報など、社外秘のデータが詰まった部屋で、入るのにも出るのにもカードキーが必要。社員でもこうして頼まれた時くらいしか入れない。
えーと、カードを通して社員証あてて……。ピッと解除された部屋に入ろうとドアを開けると、後ろからどんっと押されるようにして部屋に押し込まれる。
「へ?」
な、なに……!?
見ればそれは内海さんで、私と彼が部屋に入ったところで部屋はバタン、と閉じられた。
「う、内海さん……?」
「ちょうど良かった。ここならお前の不機嫌の理由を聞くのにぴったりだろ」
「えっ!?」
余程先程の私の態度が気に入らなかったのか、二人きりで話をしようと思っていた彼からすればこの資料室は絶好の場所だったらしい。
部屋を出るにはまたカードを通して社員証をあてて、ロックを解除されないといけない。けど、そんなことをしているうちに彼が逃がしてくれるわけもない。
ということは、話すまで逃がさないつもりだ……!
ふふん、と笑う内海さんに、私はとりあえずまずは資料を探そうと気まずく背中を向ける。