ビター・スウィート
「で?なにイライラしてるんだよ」
「別に。してませんけど」
「してるだろうが」
「してたとしても内海さんには関係ないじゃないですか」
我ながら、可愛げのない言い方だと思う。つん、とした言い方で顔を背けたままでいる私の背後では、内海さんの呆れたような溜息が聞こえた。
「……可愛くねー言い方」
「なっ……!悪かったですね!昨日内海さんといた女の子みたいに可愛くなくて!!」
ぼそ、と呟かれた一言にかっとなりつい言ってしまったこと。内海さんは少し驚き、その反応から自分が墓穴を掘ってしまったことに気付く。
「お前、なんでそれ……」
「はっ!」
し、しまったー!!
「な、なんでもないです!」
「はぁ?なんでもなくないだろ、おい永井……」
あぁもう、気まずい。資料なんて探している場合じゃない。ここはもう、内海さんを振り切ってでもこの部屋を出るしか……!
そう覚悟を決めたところで、ふと気付く。
あれ?開ける時に使ったカードキーがない。