ビター・スウィート
「あ、あれ?内海さん……カードキーって、持ってます?」
「持ってるわけないだろ。お前、さっき開けてどうした?」
「さっき開けて……あ!!」
カードを通して、内海さんが来て、背中を押されて……驚いて、手から離してしまった気がする。
ということは、つまり……。
「……廊下に落として、きちゃった……」
それはつまり、ここから出られないということ。
「は……はぁ!?」
「どうしましょう内海さん!出られません!出られなくなっちゃいました!!」
「マジか!?このバカ!なにやってんだ!!」
「元はと言えば内海さんがっ……」
ギャーギャーと騒ぐ私と内海さんに、その場は一気にパニックになる。
どうしよう、どうしようっ……!
出られなかったら、このまま一生ふたり……。
「いやー!!死にたくないですー!!」
「死ぬかアホ。落ち着け」
半泣きで叫ぶ私に、内海さんはバシッと頭を叩いて落ち着かせる。
そして胸ポケットから黒いカバーのスマートフォンを取り出すと、ススッと操作してどこかへ電話をかけた。