ビター・スウィート
「いったぁ〜……」
「ぶっ」
ところが、痛がる私に彼からかけられたのは心配する声より噴き出す声。
「なっ、なんで笑うんですか!」
「いや……コントみたいだと思って。悪い……ブフっ」
「悪いって言いながら笑わないでください!」
堪えきれていない笑いに怒るものの、彼はやはりニヤニヤと笑う。
む、むかつく……!
けど、相変わらず子供みたいなその笑顔が、ちょっとかわいい。とか思ってしまうところがまたくやしい。
資料を手にじっと彼を見ると、内海さんは思い出したように言う。
「そういや、お前にその資料持ってくるように頼んだ部長。俺、昨日一緒に飯食いに行ったんだよ」
「へ?なんですか、いきなり……」
「で、そこで部長の娘と行きあって、三人で飯食ってたってわけだ」
部長と、その娘さんと三人でごはん……。
ん?あれ?ってことは、昨日内海さんといた若い女の子って……。
「も、もしかして、あの可愛い子が部長の娘さん!?」
内海さんの言葉にもしやと気付く私に、彼は「あぁ」と頷く。
「まだ飲むって言う部長に娘は先帰るっていうから、タクシーで送っていったんだよ」
「あ、だから……」
だから二人でお店を出ていたんだ。なんだ、じゃあ恋人とかではなくてただの上司の娘さんってだけ……。
思わずほっとしてしまう私に内海さんはこちらへ近付き、ふっと笑う。