ビター・スウィート



「その反応、やっぱりお前昨日見てたな?」

「へ?あっ!い、いえこれはその……」

「見てたんだろ?」

「……残業帰りにたまたま、見かけただけです」



それ以上の言い訳を許さない言い方をする内海さんに押し負けるように、私は渋々白状した。



「で?俺が若い女連れてヘラヘラしてる嫌な男だとても思ったか」

「い、いえ!そうじゃなくて……」



そうじゃない、そうじゃなくて。必死に代わりになる言葉を探すけれど、きっとどんな言い方をしても彼には嘘だとばれてしまうだろう。ならば、観念するしかない。



「……あんな可愛い彼女さんがいたんだって、ちょっとびっくりしただけです」



可愛くて優しそうで、品のある女の子。その子はとても内海さんの隣に似合っていて、悲しいような、切ないような、言いようのない気持ちが胸を占めた。

いくら自分で『違う』と否定しても、この感情の呼び名はわかっている。

これは、きっと。



「要するに、ヤキモチ妬いてたってわけか」



『ヤキモチ』、そう言って目の前の黒い瞳は笑う。からかうように、面白がるように、そしてなぜか、少し嬉しそうに。


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