ビター・スウィート
「広瀬の代わりになれるほど、俺は優しくなんてねーよ」
身代わり?広瀬先輩の、?
……あぁ、そっか。そういうこと。
私が、広瀬先輩への失恋を他の誰かで忘れようとしてる、って。その代わりとして内海さんを選んだって、そう思われているということ。
『広瀬くんがダメならすぐ内海くん』
周りと同じ目で、見られていたんだ。
「……だから、んなアホなこと言ってないで、」
言いかけた彼の言葉に、堪えきれず瞳からは涙が溢れる。
「……永井……?」
「っ……すみませんでした、失礼します」
「あっ、おい!永井!?」
そして急いでその手から書類を奪うと、駆け足でその場を飛び出した。
ダメだった。伝わらなかった。
『自分の心がそこにあって、彼がそれを分かってくれていれば、それで』
菜穂ちゃんごめんね、折角励ましてくれたのに。ちっとも伝わってなんていなかったよ。
彼から見れば私は“傷付いた代わりに彼を選ぶような人”で、勇気を出して伝えた『好き』も、なんの意味もなかった。
恥ずかしい、悔しい、悲しい
涙が、止まらない。