ビター・スウィート
「内容に問題はない。終わったら俺のデスクに置いておけ、頼んだぞ」
「はぁーい」
そして逃げるように、俺はその場を後にした。
仕事をしていれば元気になる、か……。
それはきっと、そう思うことで自分を励まし支えているのだろう。
永井から突然好きだと言われたのは、もう二週間近く前のこと。
あの時永井が俺の前から逃げ出してから、以来一度も口を聞いていないし顔すらも合わせていない。
というのも、永井には部署混合で選抜された社員たちで構成される新規の開発チームへの話がきて、断るわけもなく受けた永井はここしばらくそちらのフロアで仕事をしている。
同じ部署、という接点が薄れた今、互いに顔を合わせることもなくなって当然といえば当然だ。
……けど、頭の中では今だに、あの日の永井の泣き顔が焼き付いて離れない。
『広瀬の代わりになれるほど、優しくなんてねーよ』
自分の一言、それがどれほど軽はずみで最低だったか分かっている。分かっているからこそ、自分が憎い。