ビター・スウィート
あーもう、くそ。
むしゃくしゃとする気持ちを表すように髪をぐしゃぐしゃとかき、足を向けたのは会社からしばらくいった先にある大きめの居酒屋。
がやがやと中の声が漏れるその店の入り口には『ご予約・都立第一高等学校同窓会様』の文字。
19時前……もう大体集まっているか。
そう、今日は高校の同窓会であり、早い時間の一次会からは行けなかった俺はこの二次会から参加することとなった。
花音からも『来なよ!絶対!』と誘いのメールがしつこく来ていたし。
「いらっしゃいませー」
ガラ、とドアを開けると、威勢のいい声に出迎えられる。
「すみません、予約の」
「あ、はい。ご予約の方は奥のお座敷となっておりますー」
そして通されるがまま奥の部屋へ靴を脱ぎ上がろうとしたその時。
「しーのぐっ!やっと来たなー!」
「うおっ」
その陽気な声とともに、背中にどかっと肩でぶつかられる感触。
俺にこういうことをする奴、というだけで数はしぼられるが、それが女の声となればもう一人しかいない。