ビター・スウィート
「んじゃ、本当になんでもないの?」
「ねーよ」
「あの子のこと、好きでもないの?」
「……ねーよ」
ぼそ、と呟いた否定の言葉。それに花音は呆れたように笑う。
「凌ってさ、嘘つくの下手だよね」
「なっ!?」
「嘘つくときだけ声のトーン変わるし、すぐバレるような嘘でごまかしたりするし」
は、反論できない……!
わかり切ったように言ってみせる花音は、茶色く長い髪をふわりと揺らす。
「ね。あの子のこと、好きなんでしょ?」
「……だから違うって。だいたいお前はなんの根拠があってそんな……」
「えー?そんなの、見れば分かるよ」
「は?」
「凌があの子と歩いてるの見た時に、優しい目してたから。好意があるんだろうってことくらい、分かるよ」
俺が、優しい目をしていた……?
ガキの頃から知っていて、なにもかも見透かしている花音には、これ以上隠したり見て見ぬふりをするのは無駄なことらしい。
そうようやくさとり、観念したようにため息をついた。