ビター・スウィート
「……怖いんだよ」
「え?」
「もし仮に、それで付き合ったとして、『あの人と違う』って比べられたり、がっかりされるのが」
いい歳して、情けないことを言っていると思う。
けど、怖いんだ。『広瀬と違う』そう思われて、がっかりされてしまうことが。
広瀬だったらもっと優しいだろう、広瀬だったらこうしてやるんだろう、そう思うたび。
好きだと、想うからこそ怖い。
「ばっかじゃないの」
「は!?」
って正直に言ってもこの言われ方!?
隣を見れば、花音は「ふんっ」と呆れたようにまたも靴を履き直す。
「凌はさ、自分がどれだけ期待されてると思ってるわけ?」
「は……?」
「目つきも口も悪くて、性格もきつい。そんなあんたが、がっかりされるほどそもそも期待されてるわけないでしょ」
相変わらず、超がつくほどストレートな奴。
容赦のない言い方をしながら、靴を履き直した足でカッ、カッと勇ましく俺の目の前に立つ。
「そんな凌でも好きだから、あの子は告白したんでしょ。がっかりなんてしない、それくらいでなくなる気持ちなら、そもそも好きになんてなってない」
そんな俺でも、好きだから……。
「凌もその子が好きなら、信じてあげなよ」