ビター・スウィート



「ねぇ、ちー。聞いてもいい?」

「はい?」

「ちーは、内海のどこが好きなの?」

「え!?なんですかいきなり……」



まさか広瀬先輩にそんなことをたずねられるとは思わず、驚いてしまう。



「だって俺と内海って正反対じゃない?だからこそ、ちーは内海のどこに惹かれたのか単純に知りたくて」



広瀬先輩と、正反対の人。

そんな彼のどこが好きか、なんて



「……内海さんは、まっすぐなんです」

「あぁ、言い方が?」

「はい。悪いこともなんでも言うから、きついときもあるんですけど……よく出来た時は褒めてくれて、認めてくれるんです」



『コラ永井ぃぃー!!!』

『すっすみません!!』



すぐ怒る。怖い顔をして、大きな声で怒鳴る。だけど、一人の社員として仕事の出来は認めてくれる。褒めてくれる。

私の言葉にも耳を傾けて、受け止めてくれる。



「最初は『くだらねー』って呆れたように笑って、でも最後には頷いてくれる。私が泣くと困った顔で慌てて、涙を拭ってくれる」

「まっすぐだけど、変なところで不器用なんだよねぇ」

「そうなんです!変なところ気にしたりして……広瀬先輩の代わりだなんて、思ったことないのに」



怖くて、きつくて、時々優しくなくて、時々優しい。

そんな、内海さんだから。



「そんな内海さんだから、好きなんですけどね。……上手く伝わらないなぁって、へこみます」



また泣き出しそうになるのをぐっとこらえて、小さく笑うと、広瀬先輩はよしよしと私の頭を撫でた。


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