ビター・スウィート
そして、菜穂ちゃんと買い物をして食事をして、と土曜を過ごし迎えた日曜日。
「つ、ついに来てしまった……」
午後十三時の昼下がり。バクバクと心臓を鳴らし、緊張した面持ちで駅前の服屋のショーウィンドウに映る自分の姿を見た。
昨日菜穂ちゃんに付き合ってもらい散々迷った末に買った、淡い水色のミニ丈の花柄ワンピースにベージュのジャケットで女の子っぽく。
だけど足元は少しヒールの高い茶色いブーティに、メイクも少し濃い目にしてみたし……いつもより大人っぽくなっていると思う。
折角のデートだもん、女らしさをアピールして意識してもらうチャンス!おかしくないよね、よしっ!
いつも以上に綺麗にまとまったセミロングのボブヘアに、気合を入れコツコツとヒールを鳴らしながら歩いて行くと、改札前にその姿を見つけた。
「広瀬先輩っ」
「ちー。おはよ」
「お、おはようございます!」
声をかけるとすぐ笑顔で応えてくれたのは、広瀬先輩。
紺色のジャケットにグレーのパーカー、白いTシャツを重ねた上とベージュ色の細身のパンツ、そんなカジュアルな格好はいつものスーツ姿と比べ、彼を年齢より若く見せる。
すっかり見慣れたスーツ姿もいいけど、やっぱり私服も格好良い!
つい惚れ惚れしてしまう私の視線に気づくことなく、先輩はにこにこと笑う。