ビター・スウィート
「ごめんね、折角の休日に」
「い、いえ全然!特に用事もなかったですし……あっ、それで買い物っていうのは?」
「うん、妹の誕生日プレゼントなんだけどね。選ぶの手伝ってほしいなって思って」
「誕生日プレゼント、ですか?」
妹さん……って確か私のひとつ年下の、内海さん曰く広瀬先輩が可愛がってるっていう?
きょとん、と首を傾げる私に彼は「うん」と頷く。
「毎年あれこれ考えてプレゼントを贈ってるんだけど、いまいち喜んで貰えなくて」
「去年は何を贈ったんですか?」
「大きなくまのぬいぐるみ。可愛いと思ったんだけど.『私は子供じゃない!』って怒られちゃって」
「くま……」
二十代の女の子にくまのぬいぐるみ……それは確かにそう言われてしまうかも。
でも怒られてもめげることなく、何だったら喜んで貰えるだろうと更に考えるあたり、彼が余程妹さんを可愛がっていることが感じられる。
「妹へのプレゼントが分からない、なんて情けなくて他の人には相談しづらいし……それにちーなら歳も近いしセンスもいいし」
「そ、そうですかねぇ」
「うん」
広瀬先輩が、大切な妹さんへのプレゼントを選ぶのに、私を頼ってくれた……なんて、嬉しい。
喜んで貰える物を選べるかは分からないけれど、その気持ちに応えられるように選んでみよう。
「が、頑張って選びます!」
「あはは、ありがとう。頼もしいよ」
ぐっと拳を握り気合を入れた私に、広瀬先輩は笑った。
「じゃあ行きましょうか、まずはどこから……」
「あ、ちょっと待って。あと一人まだ来てないから」
「へ?」
あと一人って、誰か来るの?その疑問を投げかけようとした、その時。
「おう、お前らもう来てたのか。早いな」
「おはよ、内海が遅いんだよ」
その言葉とともに現れたのは、黒いジャケットに白いTシャツと至ってシンプルな格好をした私服姿の内海さん。
って、……え?何で?