ビター・スウィート



「ごめんね、折角の休日に」

「い、いえ全然!特に用事もなかったですし……あっ、それで買い物っていうのは?」

「うん、妹の誕生日プレゼントなんだけどね。選ぶの手伝ってほしいなって思って」

「誕生日プレゼント、ですか?」



妹さん……って確か私のひとつ年下の、内海さん曰く広瀬先輩が可愛がってるっていう?

きょとん、と首を傾げる私に彼は「うん」と頷く。



「毎年あれこれ考えてプレゼントを贈ってるんだけど、いまいち喜んで貰えなくて」

「去年は何を贈ったんですか?」

「大きなくまのぬいぐるみ。可愛いと思ったんだけど.『私は子供じゃない!』って怒られちゃって」

「くま……」



二十代の女の子にくまのぬいぐるみ……それは確かにそう言われてしまうかも。

でも怒られてもめげることなく、何だったら喜んで貰えるだろうと更に考えるあたり、彼が余程妹さんを可愛がっていることが感じられる。



「妹へのプレゼントが分からない、なんて情けなくて他の人には相談しづらいし……それにちーなら歳も近いしセンスもいいし」

「そ、そうですかねぇ」

「うん」



広瀬先輩が、大切な妹さんへのプレゼントを選ぶのに、私を頼ってくれた……なんて、嬉しい。

喜んで貰える物を選べるかは分からないけれど、その気持ちに応えられるように選んでみよう。



「が、頑張って選びます!」

「あはは、ありがとう。頼もしいよ」



ぐっと拳を握り気合を入れた私に、広瀬先輩は笑った。



「じゃあ行きましょうか、まずはどこから……」

「あ、ちょっと待って。あと一人まだ来てないから」

「へ?」



あと一人って、誰か来るの?その疑問を投げかけようとした、その時。



「おう、お前らもう来てたのか。早いな」

「おはよ、内海が遅いんだよ」



その言葉とともに現れたのは、黒いジャケットに白いTシャツと至ってシンプルな格好をした私服姿の内海さん。

って、……え?何で?


< 27 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop