ビター・スウィート
広瀬先輩、こと広瀬爽先輩は二つ年上でこの商品部の開発課で働く先輩。ちなみに大学時代から付き合いがある。
色白な肌に、透き通る丸い茶色い瞳。まるで王子様のような整った顔に、私より二十センチは高い身長。
優しくて物腰も柔らかく、穏やか。少し鈍感で天然っぽいところもあるけれど、面倒見もよく何かと気にかけてくれる人。
そんな彼を、私は好きだったりする。
そもそも私がこの会社に勤めることになったのも、小さな理由もいろいろあるものの彼を追いかけてというのが一番大きい理由。
彼の側にいたい、力になりたい。その気持ちがここまで自分を突き動かすなんて正直自分でもびっくりしている。
まぁ、これだけ必死に追いかけても、鈍感な彼は今だ私の気持ちに気付くことはないのだれど……でも。
「……こんな感じかな。ありがと、ちーの意見はいつも参考になるよ」
「そうですか?ならよかったです!」
こうして頼って貰えるだけで充分嬉しいから、まぁいっか。
そう幸せに浸り「えへへ」と笑っていると、突然バァンッ!と開かれた部屋のドア。
「わっ!?」
何事かと驚き広瀬先輩と二人そちらへ目を向けると、そこには黒いスーツに黒い髪…鋭い目が一見クールそうな外見の彼が立っていた。
その顔は怒り、まさしく鬼の形相とでもいうかのようにこちらをしっかりと睨んで。
……出た、悪魔。