ビター・スウィート
「わぁ……こんな風に飾られてるんですね、初めて見た」
「だろ。売り場に並んだ時にどう見えるかイメージを持っておけば、次のPOP作成の時に絶対役に立つ」
自分の描いた物が、こうして売り場に並んで、それを見ながらお客さんが商品を手にとってくれる。
広瀬先輩目当てで入った会社でも、こうして見つける小さなやりがいに、つい緩む顔。
はっ!こんな顔してるとまた内海さんに『アホ面』ってバカにされる!
だらしなくなる顔を押さえ隣の彼を見上げれば、そこには意外にも満足げな顔をして売り場を見つめるその顔があった。
「こうして見てもいい出来だな。いい仕事してる」
こうやって、真っ直ぐに見つめて評価してくれる。それがまた、嬉しい。
すると不意にその視線はこちらへと向く。
「ん?どうかしたか?」
「いっいえ何でも!あっ私あっちのコーナー見てきます!」
「あっ、おい永井……」
その嬉しさをさとられないように、私は足早にその場を離れ、店内奥のファイルが並ぶコーナーへと向かった。