ビター・スウィート
内海さんは、悪魔。だけどやっぱり、仕事に関しては誠実。
贔屓目もなく平等に見て、その分普段は怒られることばかりだけれど、褒められるとすごく嬉しい。
はっ!これが飴と鞭!?たまに褒められるだけで喜べるなんて、私って単純かも……。
そんな自分に少し呆れながら、目の前の棚にずらりと並ぶクリアファイルを手にとった。
あ、このレース柄かわいい。クリアファイルってキャラクター柄ばっかりだから、こういう大人向けの柄物もいいよね。小さいサイズから大きなサイズまでセットになっているのもいいなぁ。
家で使うのに一枚買って行っちゃおうかな。そう選びだしたその時、突然背後に感じる気配。
ん……?
横目で見た感じそれは私の後ろに立ち商品を見ているらしい客の一人、中年の男性で、その人はやけにぴったりと私の背後に立っている。
な、何か近いかも……。嫌だしコーナーから離れようかな。
そう動き出そうとしたその時、男性の手はそっと私のお尻に撫でるように触れた。
ひっ!!
こ、これはもしかして、もしかしなくても……痴漢!?
どうしよう、逃げたい、動かなきゃ。頭の中ではそう思うものの恐怖に足は動けなくなってしまう。
チラ、と横へ視線を向けると、少し離れたコーナーで商品を見ている広瀬先輩の姿が目に入る。
ひ、広瀬先輩……!
声を出したくても出ない。当然広瀬先輩は何も気付くことなく商品を見続けている。
どうしよう、そう戸惑う間にも体を撫でる手が止められる気配はない。