ビター・スウィート
「それにそんな短いスカート履いてるからだ。広瀬じゃなくて見ず知らずのおっさん誘惑してどうすんだよ」
「ゆうわ……!?失礼な言い方しないでください!」
「お前自身にその気がなくても、そういう目で見る男はいるってことだ。履くなら履くで油断をするな。さっきだって俺が気付いたから良かったものの……」
いつも会社でするのと同じように、お説教を始める内海さんの言葉にふと気付く。
……そう、だ。言われてみれば、内海さんが気付いて連れ出してくれたから私は助かった。
もし内海さんが広瀬先輩と同じように気付かなかったら、私はあのまま……。
どうすることも出来ずされるがままの自分を想像して、ゾッとするとともに尚更助かってよかったという安心感が込み上げる。
「っ〜……内海さん、ありがとうございます〜……」
半泣きだった瞳はもう限界で、ぼろぼろと涙をこぼす私に彼はまた困ったような顔をしてみせた。
「あーもう、またそうやって泣く」
「だって、安心して……」
「ったく、ガキじゃあるまいし」
そして、涙を拭うように指先でゴシゴシと私の目元をこすった。
先日はハンカチを差し出してくれたものの、あれは本当に広瀬先輩から借りたままだっただけなのだろう。雑に扱っているようでも、拭う指先は優しい。