ビター・スウィート
フォーチュンクッキー
そんなハプニングの連続だった日曜日。あの後の内海さんは当然というかなんというか至って変わらない様子で、広瀬先輩のもとへと戻って行った。
そしてその後は三人で食事をして、普通に帰り……迎えた翌日。
平日は月曜の午後。商品部のフロアの片隅で見つめる右手首には、キラリと光るブレスレット。
デスクに座り「えへへ」とにやけながらそれを眺める私に、隣の席で菜穂ちゃんはネイルアートをばっちり決めたラメ入りの指先でブレスレットを指差す。
「ちー先輩、それ可愛いですねぇ」
「うんっ、昨日広瀬先輩がくれたんだ」
「へぇ〜、よかったじゃないですかぁ。さすが天然タラシは普通にプレゼントあげられちゃうんですねぇ」
「菜穂ちゃんまでそんな言い方しちゃう!?」
内海さん同様、冷ややかな目で広瀬先輩を見ているらしい。菜穂ちゃんはブレスレットをまじまじと見ては視線を壁へと向ける。
「でも浮かれてるところ水差すようですけど、そろそろ商品会議じゃないんですかぁ?」
「えっ!今何時!?」
「十三時三分ですけどぉ」
「まずい!遅刻だ!!」
そういえば今日は十三時から会議だった!!
浮かれていたおかげですっかり忘れていたそのことを思い出し、私は書類を雑にまとめると、急いで席を立ち駆け足で会議室へと向かった。
ブレスレットを見る度に、嬉しさを思い出してまたドキドキする。
『似合う』と言って私のために選んでくれた、広瀬先輩の優しさに。
……不覚にも昨日は、内海さんにもドキドキしてしまったけれど。
珍しく少し優しくされたから、ちょっとドキリとしてしまっただけ。そう、だってあんな悪魔にそれ以上の気持ちを感じるわけがない。
そう、ただそれだけ。