ビター・スウィート
「ほどこうか?あ、でも俺に出来るかな……」
「広瀬先輩、不器用ですもんね」
下手に動かすと痛いし、広瀬先輩は自他ともに認める不器用だから絶対ほどけないし……うーん、こうなったら仕方ない。
「先輩、毛先ハサミで切って貰えますか?」
「えっ!?大丈夫なの?」
「すこしくらいだったら。他の部分までバッサリやらないでくださいね?」
「で、出来るかな……」
紙を綺麗に半分に折ることすら出来ない広瀬先輩の不器用さなら、他の部分まで切られかねない。けどほどけないままも困るし、絡んでいるところを少しくらいなら……。
そう納得する私に、広瀬先輩は机の上にあったケースから工作バサミを取り出す。
「じゃ、じゃあいくよ?」
「は、はい」
ハサミを持ち震えた手が、私の髪へ近づく。切る側と切られる側、お互いにはしる緊張感。それを断ち切ったのはハサミの音、ではなく彼の声だった。
「何やってるんだ?」
「わ!内海!」
突然会話に入り込む内海さんに、先輩はハサミを持つ手を止める。