ビター・スウィート
「あ、ちー。服にクッキーの食べカスついてる」
「へ?あ、本当だ……」
見れば私の着ている紺色のベストの胸元には、食べている間にこぼしていたのだろうクッキーのカス。
うわ、子供みたい。恥ずかしい……。そう思い自分の手で払おうとすると、それより先に広瀬先輩の手がポンポンとそれを払った。
恐らく親のような気持ちで、無意識にはたいてくれたのだろう。……が、その手はしっかりと私の胸に触れていて……。
「っ!!!」
「ちー?どうかし……いっ!!」
恥ずかしさと驚きに一瞬で顔を真っ赤にすると、何も気付く気配のない広瀬先輩に内海さんはげんこつで思い切り頭をゴッ!!と殴った。
「っ〜……なにするのさ、内海……」
「そりゃこっちのセリフだバカ!!鈍感もいい加減にしろよ!?」
「へ?何が……」
「なにがって……ちょっとこっちこい!!」
胸元を触られた私より怒っている内海さんは、広瀬先輩の首根っこを掴み会議室の外へとズルズルと連れて行く。
そんな光景を『何事だ』と見る周囲と同じく、私はぽかんとその場に残された。