ビター・スウィート
あ、あぁ……広瀬先輩、内海さんにシメられるんじゃ……!?
ていうか内海さんは何で私より怒って……?
戸惑いながらも一人その場に残され、思い出すのはつい先程の彼の手。
胸に触れた。ポンポン、って軽くだけど、でも、けど……無意識に触れちゃうくらい、私って女として見られてないってこと!!?
思考が辿り着く事実に、私はがっくりと肩を落とした。
『女が簡単に髪を犠牲にするな』
そういえばさっき、内海さんは私のことを“女”として扱ってくれたな。そういうところは、ちゃんとしているんだ。
だからこそ、『異性の胸を触るなんて』って意味で、広瀬先輩に怒ってくれているのかな。
一人そう考えていると、先程広瀬先輩を部屋の外へ連行していった内海さんが一人でズカズカと戻ってきた。
「あれ?広瀬先輩は……」
「罰としてコーヒー買いに行かせた」
少しのお説教程度では気持ちが収まらなかったのだろう。彼は「ったくあいつは」と呆れたように眉間にシワを寄せる。
「……私って、そこまで女として意識できないですかね」
「あ?」
「いや、だって……無意識に胸元はたくなんて、普通の女性にはできないじゃないですか」
「あー……まぁ、子供相手にやった感覚なんだろうな。そんな平らな胸じゃ仕方ない気もするけど」
「なっ!?」
ってどういう意味ですか!!
言い返したいけれど、言い返せるほどない胸に私はぐっと言葉を飲み込んだ。すると突然、彼の手はわしわしと私の頭を撫でる。