ビター・スウィート
「そもそも広瀬、お前がこいつを商品部にっていうから入れてやったんだぞ?なのに何だ、この仕事は」
「だってちーの商品感想はなかなかあてになるし、POPだって充分上手だよ?俺たちが入社二年目に当てたパステルカラーシリーズだって、ちーの協力あってこそだったってこと忘れたの?」
「あれはどっかの暇な大学生の意見ホイホイ取り入れただけのやつが偶然当たったってだけだろ!偶然!!」
『偶然』を強調し机をバンバンと叩く彼。この人は怒るとこうして勢いがあって、年下はもちろん年上や上司すらも黙らせてしまう。
以前夜の飲屋街でチンピラ相手にもこの勢いで怒鳴りつけて黙らせていたという噂も聞いたことがあるくらいだ。
そんな人に叱られているのだから、当然私も反論出来るわけもなく大人しく黙り込み、間に入る広瀬先輩の背中へササッと隠れた。
「おい隠れてんじゃねーよ!人の話は人の目を見て聞け!!」
「まぁまぁ内海、その顔にその勢いだからちーも怖いんだって」
「甘やかすなバカ!!」
「あっ、そういえば内海さっき部長に呼ばれてなかった?ほら行かないと!」
「っ……わかってるよ!」
庇うように話題をそらしてくれる先輩に、内海さんは渋々頷きドアの方へと向かって行く。
「おい永井!その書類今日中に再提出だからな!」
「きょっ今日中ですか!?」
「……文句あるか?」
「あ、アリマセン……」
そしてブレることない厳しい口調でそう言って、バンッとドアを閉めた。
相変わらず、怖すぎる……。