ビター・スウィート
「な……なんですか、いきなり」
「ま、そもそもはあいつの鈍感すぎる性格が悪いんだから、いちいち落ち込むな」
「……」
「どんな美人に言い寄られてもボーッとしてかわすような面倒くせー男だからな、お前の好きな奴は」
『だから、いちいち落ち込むな』
落ち込む心を励ますような、その言い方。
『どんな相手にも鈍いあいつだから、私に対しても鈍くても仕方ない』って、まるでそう言われているかのよう。
本当に、よくわからない人。
普段は怖いし、口は悪いし、性格だって悪魔のよう。なのに時々優しくて、褒めたり励ましたりする言葉を持っている。
苦くて甘い、人。
けどその時々の、ほんの少しの甘さに少し喜んでいる自分もいて、頭を撫でる手に小さく笑みがこぼれた。
「あ、あの!内海さん!」
「なんだよ?」
「さっきは、ありがとうございました」
そういえば先程の、髪をほどいてくれたお礼を言っていなかった。そう思い出したように言った私に、内海さんはふっと笑う。
「あ、何ならブレスレットの方引きちぎってやればよかったなぁ」
「えぇ!?」
言うことはやっぱり意地悪で、悪魔。だけど優しい人だと、そう思った。