ビター・スウィート
*2
ふたりきり
「おはようございまーす」
「おはよー」
それはとある平日、木曜日の朝。
いつも通り出勤してきた私は、すれ違う先輩に時折挨拶をしながら、自分のフロアへ向かおうといつものように社内を歩いていた。
今日は事務仕事に……あ、提出期限近い仕事もやっておかなきゃ。そんなことを考えながら歩いていると、突然目の前にぬっと現れる影。
「へ?」
何?そう顔を上げると、そこにいたのは今日も黒いスーツに白いシャツ、ノーネクタイのその姿……内海さんの、姿。
彼は黙って私の前に立ちはだかると、こちらをジロリと見る。
「う、内海さん?おはようござ……」
「おい永井」
「はっはい!」
真面目な顔つきのせいか、いつも以上に目力のある瞳。そのつり目に見据えられると、また何かしでかしてしまったんじゃないかと不安になる。