ビター・スウィート



複雑な道に、この人混み。おまけに展示場の位置もわからない。

はっ、そうだ!内海さんに電話……って番号、知らないや。



どうしよう、どうしようとブレスレット片手に戸惑っているとバッグの中からヴー、と携帯のバイブ音が聞こえた。



「電話……?」



取り出し見てみれば、それは知らない番号からの着信。誰だろう、と不思議に思いながら出てみる。



「も、もしもし……?」

『永井か!?お前今どこにいる!?』

「わっ!?内海さん!?」



すると電話の向こうから聞こえてきたのはがやがやとした雑音と、それをかき分けるような内海さんの大きな声。



「な、なんで番号……」

『広瀬に電話して聞いた!!それよりどこにいる!』

「えっえーと、ここ……どこですかね?」



驚きながらも自分の場所を伝えようとする、けれどここがどこかなんて全くもってわからない。

そんな曖昧な答えを返す私に、電話の向こうで彼が目をつりあげているのが簡単に想像できる。



『周りに何がある!?看板でもビルでもいい!!』

「えっ!?えー……あっ、銀行の看板があります!『四菱UFK銀行』っていう緑色の……」



目の前の大きな看板を目印に伝えようとした、その時。ブツッ、という音とともにツー……と電話の切れる音。


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