専務が私を追ってくる!



この日は久しぶりに、定時に仕事が終わった。

せっかくだからどこかに寄り道してから帰ろうと思ったけれど、天気は生憎の雨。

1階のターミナルからバスに乗り、真っ直ぐ家に帰った。

いつもより気合いを入れて夕食を作り、食べ、洗い物をして、今日はゆっくり風呂にでも浸かろうかと風呂のスイッチを押そうとしたところで、けたたましく携帯が鳴り出した。

ディスプレイを確認すると『着信 雨宮専務』の表示が。

会社で何かあったのだろうか。

嫌な予感が過り、急いで応答した。

「もしもし、郡山です」

受話口から音楽が聞こえる。

彼は車にいるらしい。

「雨宮だけど! あ、卓じゃなくて修の方!」

「わかってますよ、専務。どうしました?」

随分慌てている。

やっぱり何か悪いことでも起こったのだろうか。

「助けてほしい」

「何があったんですか?」

「詳しくは後で話す。今君の家に向かってる。もう着くから」

「えっ? うちにですか?」

「うん」

電話では済ませられないほどの事らしい。

不安で胸がざわざわする。

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