専務が私を追ってくる!
電話を切ってから3分も経たないうちにチャイムが鳴った。
応答し扉を開くと、何かを大事そうに抱えている修が立っていた。
黒髪が雨に濡れている。
「専務、一体どうされたんですか?」
「こ、これっ!」
修は抱えている白いタオルを私に差し出した。
「タオル?」
「違う。めくって!」
言われた通りにタオルをめくると、そこに現れたのは、茶トラ猫の赤ちゃんだった。
修の手と白いタオルをベッドにして、2匹寝転んでいる。
タオルがなければ彼の片手に収まってしまうほど小さい。
目はまだ開いていない。
鳴きもせずにプルプル震えている。
「こっ……子猫っ?」
包んでいなきゃいけない気がして、すぐにめくったタオルをかけ直した。
「俺の車の下にいたんだよ。雨降ってるし、放置して車動かすわけにもいかなくて。母猫探してみたんだけどいねーんだ。はじめはピャーピャー鳴いてたのに、次第に鳴かなくなってさ。とりあえずタオルにくるんで車に乗せたけど、俺んちペット禁止だから連れ帰れなくて」
「それで、うちに」
「うん」