専務が私を追ってくる!
「あんた、本当は優しいんだな」
ミルクを飲んで再び眠り始めた猫を眺めながら、修が呟いた。
「え?」
「もっと薄情な女だと思ってた」
至近距離で大きな目に見つめられると、触れ合った時のことが思い出されて体が熱くなる。
視線に堪えられなくなり、ふと視線を猫に逸らした。
「薄情ですよ、私」
少なくとも修は、その片鱗を目の当たりにしたはずだ。
忘れたわけじゃあるまい。
私がついた嘘を。
「それでも、こいつらをもらってくれて、ありがとう」
「いえ……私が飼いたいと思っただけですから」
テレビのついていない静かなリビング。
私たちが黙ると、雨と時計の秒針の音が小さく聞こえる。
猫たちが動いたり鳴いたりするのを見ているだけで、胸がキュンキュンする。
時間はどんどん経過していった。
そろそろ日付が変わろうかという頃。
「今夜、泊まってく」
修の一言に、私は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。