専務が私を追ってくる!
「えっ?」
赤坂のホテルを出るときに彼が言った“3回目”が、早くも来たのだろうか。
一気に心拍数が上がる。
「俺も猫の面倒見たいんだ。郡山さん一人じゃ大変だし、二人で手分けしよう」
ああ、そういう意味で……。
そりゃそうだ。
私は一体何を期待していたのだろう。
「一人でも大丈夫ですよ。ちゃんと目覚ましかけて……」
猫に構いたい修は、私の言葉など聞かずに続ける。
「それと、こいつらの名前も決めた」
「私が飼うのに専務が決めちゃうんですか」
「ダメ?」
「一応うかがっておきます」
修は眠っている子猫を愛おしそうに見つめながら、まず左側の猫を指差した。
左側の子は右の子よりも毛色が少し濃い。
「こっちが、ミキ」
次に右を指差す。
右の子はちょっと毛色が白っぽくて、左の子より少し小さい。
「こっちが、ミカ」
私は修をじろりと睨みつけた。
「嫌がらせですか」
どっちも私が使った偽名なんですけど。