専務が私を追ってくる!
「ミキ、ミカ。私、頑張るからね」
「ぴー」
「ぴーぴー」
決意を固めていると、夜にもかかわらず家のチャイムが鳴った。
インターホンのパネルを見ると、クールビズスタイルの修が画面に映っていた。
「はい」
「雨宮ですけど」
猫に会いにきたのだろう。
すぐに玄関へと向かい、扉を開ける。
「お疲れ様です、専務。あの子たち、今ちょうど起きてますよ」
「あー、うん」
珍しくキレの悪い返答。
「どうぞ」
「おじゃまします」
修は少しモジモジしながら、私に促されるまま玄関に入った。
違和感を感じて彼をよく見ると、何やら大きなバッグを抱えている。
色が黒だから気付かなかった。
何を詰め込んでいるのか、パンパンに膨れている。
出張の予定でも入ったのだろうか。
いや、そんなはずはない。
今は株主総会後の根回しで忙しいから、泊まりの出張なんて入れる余裕はないはずだ。
「どうされたんですか、その荷物」
思ったまま尋ねると、修は私をしっかり見つめながら言った。
「俺、しばらくここに住む」