専務が私を追ってくる!
テレビ越しに彼をうかがうと、正面を向き、腕を組み、俯いている。
私の言葉を聞いて考え込んでいる様子だった。
その姿勢で顔だけが私の方へ向いたから、反射的に私も修の方を見た。
大きな瞳に捕らえられると、胸の中で重い塊がグラグラ私を揺さぶる。
「それで、質問の答えは?」
「え?」
「だから、郡山さんがどう思ってるか」
「それはっ……」
私は彼の気持ちを否定しただけで、まだ彼の問いには答えていない。
修が動いて、ソファーが弾んだ。
私のすぐ隣に座った彼から熱を感じる。
「とにかく恋人が欲しいのも事実。性的欲求があるのも事実。だけど、恋人になってほしいのも性的欲求を感じているのも、郡山さんにだけだよ。他の誰かじゃ嫌なんだ」
「専務、近いです!」
逃れようとすると腕を掴まれ引き寄せられた。
ドキンとして息が詰まる。
そっと頬に手を添えられて、かあっと熱くなっていく。
「好き。こうしてほっぺに触ってるだけで幸せ。地味な格好してたって、可愛くて仕方ない。こんな気持ち、思い違いであるわけがない」
恋愛は禁止だ。
好かれたくて着飾りたくなる。
着飾ると自分が良く見えて、高貴な人間だと勘違いする。
嫌な女に戻ってしまう。
だからやめて。
あなたにだけは、嫌な女だって思われたくないの。
「こんなに俺のこと好きって顔してるくせに。それを認めるのが怖いの?」