専務が私を追ってくる!
頭の中を見透かされたような言葉に、ビクッと震えた。
怖いよ。
怖いに決まってる。
好かれたくて着飾りたい欲求を抑えられたとしても、あなたに愛されただけで、私は確実に勘違いする。
愛し愛される幸せに溺れて、本来の目標を見失うのは確実だ。
私は愚かな女なのだ。
そもそもこんなはずじゃなかった。
修のことは最後の思い出として胸に秘めておくはずだった。
再会して彼への気持ちが増幅したのも、正体を明かしたのも、再び肌を重ねたのも、一緒に暮らし始めたことだって想定外。
ましてや、修が私を好きになるなんて。
私の新生活は彼のせいでメチャクチャだ。
「好きだとしても、言いません。前に言ったじゃないですか。私今、恋愛禁止なんです」
「どうして? そろそろ理由を教えてよ。この町に引っ越してきたのと関係があるんだろ?」
大きな目から放たれる眼差しが、私を射る。
いつも家にいるときはちょっぴりだらしない末っ子体質なのに、仕事の時のように真剣な顔をしている。
彼は今、この地味で冴えない私を、ほんきで口説き落とそうとしている。
心臓が落ち着かない。
気を抜くと余計なことを口走ってしまいそう。