専務が私を追ってくる!
何がすごいのか、私には全然わからない。
私は生まれ育った東京で自分を変えられなかったから、このN市へ逃げてきただけだというのに。
「まあでも、郡山さんが俺と付き合うことに何の問題もないってことがわかってよかったよ」
修が安堵のため息をつく。
私は彼を安心させるようなことなど何も言っていないのに。
「あの。私の話、聞いてました?」
「うん。聞いてたよ。性格直したいから恋愛禁止だったんでしょ?」
「過去形じゃなくて、現在形でお願いしたいのですが」
修はニッと勝ち気に笑って立ち上がり、ガバッと私を横抱きにした。
あまりにも突然のことに、私は条件反射で悲鳴を上げ、落ちまいと修の首に片腕を回す。
景色がくるりと90度動く。
修は私を抱えたままソファーへ腰を下ろし、私も彼の太ももに着地。
突然体を抱えられたスリルによるドキドキと修と密着しているドキドキが混じって、自分がどんどんおかしくなっていくのがわかる。
彼は私の冷静さを奪う天才だ。
「過去の自分を恥ずかしいと思うのは、既に成長したっていう証拠だ」
「え?」
「中学の時の先生が言ってた。だから行動を起こした時点で、郡山さんの性格はもう直ってるってこと。よってオシャレも外食も恋愛も、禁止する必要なし!」