専務が私を追ってくる!
「そんな、無茶苦茶な……」
新生活における三原則も、解禁日の設定も、全て自分で編み出して自分に課してきたものだ。
それを誰かに話したのはこれが初めてである。
修にここまで強く『禁止する必要がない』と断言されてしまうと、自分に甘い私は『ここまで自分はよくやった』という考えに至る。
それではマズいと気づき、慌てて『これだから私はダメなのだ』と考え直した。
「無茶苦茶でも何でもいいよ。俺との恋愛を解禁できるなら、知力の限りを尽くして論破する」
修が私を手に入れようと必死だ。
嬉しくないわけがない。
愛を感じると鼻の奥がツンとして涙が滲み、瞳から溢れた。
彼に愛されるという最高の幸せが目の前にある。
己を恐れて意地を張っているなんて、本当はとんでもなくバカバカしい事なのかもしれない。
修は優しい顔で私のメガネを外して、温かい指で流れた涙を拭った。
ねぇ、専務。
もし私の悪い癖が出てしまっても、私を好きでいてくれる?
「ねえ、もう一回聞くよ」
鼻をすすり、次の言葉を待つ。
「俺のこと、どう思ってる?」
「……大好きです」
とうとう白状してしまった。
口に出した途端、胸に刺さっていた太い杭が抜けたように、スッと楽になった。
我慢していた分、心の中で好きの感情が一気に湧き出て止まらない。
「じゃあ、恋愛解禁ってことで、いいよね?」
本当にいいのかな。
「いいよね!」
「はっ、はいっ! あ……」
考えたいことはたくさんあったのに、勢いに釣られて、ついそう返事をしてしまった。
修は私がそれを取り消したりしないよう、ぎゅうぎゅうに抱きしめ、唇で私の口を塞いだ。
私たちはしばらくキスに夢中になりすぎていて、隣の部屋で猫たちが鳴いていることにすら気付かなかった。