専務が私を追ってくる!
二人で赤坂のホテルを出た時、修が言った。
『もしかしたら、いつか3回目があるのかもな』
その時私は彼の言葉に驚いたし、彼も同意を求めたりしてこなかったから、何の反応もせずにスルーした。
だけど本当は、私も3回目があるような気がしていた。
確信に近いものもあった。
それはなぜなのか自分でも不思議に思っていたけれど、実際に3回目を迎えてみて、わかった。
私が3回目を求めていたからだ。
私が感じていたのは確信ではなく、願望だった。
「ふふっ」
私の首元に顔を埋めていた修が笑う。
息がかかってくすぐったい。
「なっ、なに……?」
「同じにおいがする。1回目のときも、2回目のときも、美穂はこのにおいだった」
言って、わざとクンクン鼻を鳴らす。
私はどんなにおいがするのだろう。
半年間記憶に残るほど、個性的なにおいがするのだろうか。
「においとか、なんか恥ずかしいんですけど」
「これからもっと恥ずかしいことするのに?」
「もう、やめてよ」
「嫌ならやめる?」
「やだ、やめない」
私の顔はメイクを変えてメガネをかけただけでわからなかったくせに、においは覚えているなんて。
私は修の顔は覚えていたが、においなど覚えていない。
彼はどんなにおいがするのかと、試しに私も彼の肌を嗅いでみる。
驚いた。
修からは嗅ぎ覚えのあるいいにおいがしたし、その瞬間、1回目と2回目の記憶が蘇ったのだ。
「社長室で再会したとき、美穂のにおい嗅いでおけば、すぐに思い出せたのかもな」
「初対面かもしれない相手に、変態じゃん」
「ははは、それもそうか」