専務が私を追ってくる!

ああ、言う前に鳴いちゃった。

「え? 今の、何の音?」

音っていうか、声なんだけど。

「ああ、うん。実はね」

私はリビングと隣の部屋を繋ぐ間仕切り扉を開く。

ケージの中にいる子猫たちが、私に構ってもらえることを期待して出入り口にやって来た。

二匹を抱きかかえると、知らない人間がいることに気付き、誰だ誰だと興味津々な様子で暴れ始めた。

「子猫飼い始めたの。可愛いでしょ?」

母は目も口も開いたまま、しばらく固まっていた。

そして想定通り、母のスイッチがオンになる。

「猫なんか飼ってどうするのよ。しかも2匹? まだ赤ちゃんじゃない。ちゃんと育てられるの? そもそもあんた一人でちゃんと生活できてるの? 飼うなら飼うで、もっと生活が落ち着くまで我慢できなかったの? 初めての独り暮らしで色々やりたいこともあるんでしょうけど、ちゃんと順番を守らないと、大変なことになるわよ」

……100%こうなると思っていた。

私もまだまだ末っ子の甘えん坊に見えているらしい。

母と奥様は、心配して口が多くなってしまうあたり、やっぱりタイプが似ていると思う。

社長、気が強い女の人がタイプなんだ。

きっと。

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