専務が私を追ってくる!

私は慌ててカゴから修の衣類を引っ張り出し、靴下を拾った。

それでホッとしたのも束の間、洗面台には彼の歯ブラシとひげ剃りセットが堂々と鎮座していた。

それも慌てて回収。

朝、全部持ったって言ったくせに、うそつき!

ぐるりと周りを見渡し、他に何もないのを確認して脱衣所を出る。

そして猫部屋に戻る前に、二階の開かずの間へ行き、修の残骸をその場にあった紙袋に詰めて隠した。

……ふう。危なかった。

修の私物があるのが当たり前になりすぎて、気付かなかった。

いつもはちゃんとカゴに入れない彼を怒っていたけれど、今回ばかりはそのだらしなさのおかげで助かった。

今頃修は何をしているのだろう。

久しぶりに帰るマンションの部屋で、ミキとミカを恋しがっているのだろうか。

赤ちゃんを育てるのは、やらなければならないことがたくさんあり過ぎて大変だけど、その大変さが愛を育んでくれる。

「お母さん、お風呂溜めてる間に、猫にミルクあげてみる?」

猫用の小さな哺乳瓶も、二匹が大きくなるにつれ、傷が目立つようになってきた。

「哺乳瓶なんて、本当に赤ちゃんみたいね」

「そうなの。今でもたまに夜中に起こされるよ」

「あんたにそっくりね。美穂はほんとに夜泣きが酷かったのよ」

夜中に起きるのは結構辛い。

人間の場合、子猫より育てる期間がずっと長いから、大変なんだろうな。

私もいつか、人の親になれるのだろうか。




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