専務が私を追ってくる!
この日、母が帰ってきたのは午後8時頃だった。
迎えに行くと言ったのだが、同級生の誰か(おそらく男性)に、車で送ってもらったようだ。
「おかえり。同窓会どうだった?」
「すっごく楽しかった。みんな変わりすぎて誰が誰だかわかんなかったわ」
程よく酔っていて上機嫌。
本当に楽しかったのだろう。
「そうそう、雨宮くんにお土産もらったのよ」
「社長に?」
「美穂に世話になってるからって」
社長がデレデレしながら母に紙袋を渡す顔が目に浮かぶようだ。
後ろで奥様が歪んだ笑顔を向けている様子も容易に想像できる。
「世話になってんのはあんたの方なのにね。私こそ手土産を持っていくべきだったわ」
「ほんとだね。あ、クッキーだ。今食べるでしょ。コーヒー淹れるね」
ついでにミキとミカのミルクも作ろう。
湯を沸かしてコーヒーとミルクの準備をする。
母は間仕切り扉を開けて、猫のもとへ遊びに行ったようだ。
可愛がる声が聞こえる。
「お母さん、ミルク持って行くから飲ませてくれる?」
「ねえ、美穂。ちょっと来て」