専務が私を追ってくる!
「胃炎を起こしてるみたいだね。吐いたのも飲んだミルクだけみたいだし、発症がさっきなら、点滴するほどではないかな」
「胃炎? ミルクがダメだったんでしょうか」
「いや、たまたま何か好奇心で口に入れたんだろう。子猫のうちはちょいちょい体調を崩すもんだよ」
「ちょいちょいって……心が持ちません」
「飼い主の心だって、子猫の体と一緒に強くなるのさ」
「先生……」
薬を投与されたミカはまだ診察台の上で辛そうにしている。
こんなとき、私がしっかりしていなきゃいけないんだ。
「こんばんは、遅くなりました」
修が病院にやって来た。
電話口では落ち着いていたように聞こえたけれど、余裕のない顔つきだ。
診察台のミカを見て、心配そうに眉を寄せた。
「胃炎だって。お薬もらったし、きっともう大丈夫……」
「そうか」
ホッとした顔をして、私の肩を抱く。
不安から解き放たれた私も、彼に甘えて体を預けた。
「みゃーみゃーみゃー!」
背後から元気な猫の泣き声がして、ハッとする。
振り返ると、大好きな修を見つけてはしゃぐミキ、そして不気味な笑みを浮かべて修を見つめる母の姿が。