専務が私を追ってくる!
「美穂、そちらは?」
ミカの容態ばかりに集中していて、お母さんとミキの存在を忘れてた。
ミキを抱く女性が私の母であると察した修は一歩前に出て、一度深々と頭を下げる。
「初めましてお母さん。雨宮修と申します。美穂さんと、お付き合いさせていただいています」
「どうも、美穂の母でございます。雨宮って、まさか……」
「ええ。卓と久美子は僕の両親です」
「じゃあ、あなたが美穂の付いてる専務さん?」
「はい、そうです。美穂さんには公私共に大変お世話になっております」
再び頭を下げる。
恭しく接する彼の緊張が、私にも伝わってきた。
「今日同窓会でご両親とお話したのよ。でもそんなこと一言も言ってなかったからびっくりしちゃったわ」
どうして教えてくれなかったのかと、母が鋭い視線で私に訴えてくる。
「仕事のこともあって、社長と奥様にはまだ言ってないの。彼のことは、明日紹介するつもりだった」
慌てて言い訳する。
まさか、こんなタイミングで紹介することになるなんて。
心の準備ができていなかったから、親相手にドキドキしている。
「みゃーみゃー」
前足を懸命に修の方へと伸ばし、バタつかせるミキ。
「こらミキ、ここ病院だから静かにしろって」
「みゃーん」
修が母からミキを受け取った。
ミキは嬉しそうに修に甘えている。