専務が私を追ってくる!
『東京羽田行き664便の、優先搭乗を開始いたします——』
時間が来た。
母は修に預けていた手荷物を受け取る。
「急がなきゃ」
「はい。お気をつけて」
「お父さんとお姉ちゃんによろしくね」
「はいはい。それじゃあ修くん、美穂をよろしくね」
ニコッと笑い、手荷物検査場へ。
久しぶりに会えたから、ちょっと名残惜しいな。
そう思っていたら、母は思い出したように足を止め、こちらを振り返った。
「あ、そうそう、あなたたち。美穂一人より修くんがいる方が安心だから、これからも一緒に暮らすのは構わないけど。くれぐれも順番は間違えないようにね」
「え……?」
母は不敵に微笑んで、私たちの返事を聞かずに颯爽と奥へ行ってしまった。
一体どこでバレてしまったのだろう。
片付ける前に洗濯カゴの衣類を見られた?
洗面台のカミソリや歯ブラシ?
猫の懐き方?
もう、なんでもいいや。
とにかく認めてくれて嬉しい。