専務が私を追ってくる!

修が専務としてこの会社にやって来てから、4ヶ月が経過した。

夏真っ盛り。

愛用の仕事ノート「おさむ帳」はいつの間にか2冊目に突入している。

東京で遊んでいた苦労知らずのバカ息子だの何だのと言われてきた修の仕事の成果が、少しずつ現れ始めた。

「シートを変えてから、夜行バスの売り上げがグンと伸びましたね。夏休みに入ってからは、若年者向けの旅行商品の売れ行きも好調みたいですよ」

観光事業課から送られてきた報告書をプリントアウトして修に手渡すと、ホッとしたようにグラフを見つめた。

「よかった。かなり強気の姿勢で稟議を勝ち取ったからね。これで失敗してたら、専務解任されてたかも」

「そうですね。うちの株主、容赦ないですから」

私も6月に行われた定時株主総会の会場に居合わせていたが、修の専務就任を渋った大株主がいてヒヤヒヤしたのを覚えている。

日頃の必死な仕事ぶりと目に見えてきた成果。

修の社内でのイメージは少しずつ良い方に変わっていると言っていいだろう。

春は「どこの部署に行っても怪訝な顔をされてやり辛い」とぼやいていたが、今は「どこの部署に行っても全部俺に相談してくるからめんどくさい」というぼやきに変わった。

修本人も秘書である私も忙しくなるが、いいことだと思う。

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