専務が私を追ってくる!
気が重くて、何となくお腹まで痛くなってきた。
矢面に立たない私が胃を痛める意味なんてないのに。
副社長は頼もしい笑顔を私に見せる。
「まあ、25年前よりマシだし、大丈夫だよ。僕が何とかする」
「副社長……」
25年前、社長と共にこの会社を倒産から救ったのはこの人だ。
そんな彼が笑うのだから、きっと大丈夫。
不思議とそう思える。
カリスマ性にすぐれ、社員からだけでなく金融機関からの支持も厚い。
エレベーターの扉が開いた。
副社長の巨体が乗り込むと、箱が少し揺れていた。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってくるよ。女の子に見送られると嬉しいもんだね」
「そんな」
扉が閉まり始めた、その時。
「じゃあ、君の彼にも頑張るよう伝えといてね」
「え?」
扉が閉まり、そのつやに私の姿が映る。