専務が私を追ってくる!
今、副社長は『君の彼』と言った。
私たちが付き合ってることを知ってるの?
いや、まさか。
専務と秘書が男女のペアだから、冗談でそう言っただけだ。
社長だって同じような冗談を好んで言うし。
今はそんなことを気にしている場合ではない。
専務室に入ると、部屋は夕日で真っ赤に染まっていた。
部屋の焦げ茶色の部分だけが、凛として光を吸収している。
「明日は晴れますように」
天気じゃなく、心が。
私はブラインドで西日を遮り、修に任されている書類関係の仕事に取りかかった。
キリが良いところまで終わったら、いったん家に帰ってミキとミカにご飯をあげなくちゃ。
修は帰ってこられないかもって言ってたな。
着替えくらいは取りに来るだろうから、衣類をたたんで袋に入れておこう。
やるべきことはたくさんある。
この日から数日間、修は本当に私の家には帰ってこなかった。