専務が私を追ってくる!
「この間は着替えの準備、助かったよ」
「いいえとんでもない。そういえば足りなくなってる頃ではないですか? 洗ってきますから、着たものは出してください」
今私が個人的に出来ることは、洗濯くらいしかない。
結構溜まっているはずだ。
「いや、大丈夫」
「え?」
「いや、ほら。母さんが親父のと一緒にやってくれてるから」
修が目を逸らしたのを、私は見逃さなかった。
「そうですか。お帰りは土曜日ですし、私は無事に休みを頂けそうなので、空港までお迎えに行きましょうか」
「いや、それも大丈夫。親父も一緒だし、明後日は一度一緒に実家に帰るつもり。そっちに帰る前に、連絡するよ」
「わかりました……」
何だろう、この違和感。
緊急事態だから?
そのせいで疲れているから?
ちょっと気になったけれど、それどころではない現状が微かな疑問をすぐに覆い隠す。
「じゃあ、ミキとミカをよろしく頼む」
「わかりました」
「……美穂」
キャリーケースから手を離して、修がつかつかこちらに歩いてきた。
抱きしめられると、さっきの違和感なんて完全に忘れてしまう。