専務が私を追ってくる!

私と修はこの日、ずっと部屋作りをしていた。

椅子だけでなく棚も組み立てるタイプばかりで、私もドライバーを握って作業に没頭する。

引っ越してきた時、ずっと似たような作業をやったばかりだったから、我ながら手慣れたものだ。

このままどんどん仕上げてしまいたい。

しかし修はそれを邪魔するかのように、私にとっては際どい質問をぶつけてくる。

「郡山さん、訛りがないね。どこ出身?」

履歴書はいつでも閲覧できるため、嘘をつくわけにもいかない。

「東京です」

「マジで? 俺も昨日まで東京にいたんだよ。東京のどこに住んでたの?」

無邪気な顔をして嬉しそうに目を輝かせている。

「杉並区です」

「おおっ、都会っ子じゃん。俺は足立区。学生時代は八王子に住んでた」

「そうなんですか。近くはないですね」

あの夜は詳しい住まいのことは話さなかったが、会話する度にバレるような気がしてヒヤヒヤする。

「そんな都会っ子が、どうしてこんな辺鄙なN市に来たの?」

「祖母が亡くなって、私が家を引き取ることになりまして」

お願いだから、あんまり深くは聞かないで。

特に引っ越した時期なんかはバレそうで困る……

「ふーん。いつ引っ越してきたの?」

思ったそばから聞いちゃいますか。

「……昨年の11月末です」

厳密には、あなたと赤坂で一夜を明かしたその日です。

絶対に言わないけれど。

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